アドラー心理学⑯現実を受け入れられない人はどうしたらいいの?

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    今日のテーマ

    前向きに、あきらめる

    現実を受け入れられない人は、どんな人か?

    それは失ったものをあきらめられない人です。

    未来への希望 大切な人 健康な体
     お金 若さ 愛情 成績 仕事   ‥‥

    人間はいろんなものを失って、現実が思い通りにならないことを知ります。

    『現実』とは『今』のことです。

    今の自分が、現実を生きる本当の自分です。

    過去の思い出や、未来への希望‥‥

    そういうものに逃げずに、今、この瞬間の自分が本当の自分だと認めることが、現実を受け入れるという事です。

    ありのままの自分を受け入れるという事です。

    アドラー心理学では、自己受容と呼ばれます。

    過去や未来にしがみついてはいけません。

    自己受容したかったら、失ったものを、前向きにあきらめるしか道はありません。

    『前向きに』というのが重要なポイントです。

    今すぐ現実を受け入れたい人へ

    目次

    今日のテーマ

    今日は『現実を受け入れられない人』への処方箋を話していくわよ。

    アドラー心理学の『自己受容』の話だったよな。

    ありのままの自分を受け入れる話。

    そうそう。前回に詳しく話したわね。

    ありのままの自分というのは、今の自分・現実の自分と同じ意味なのよ。

    現実を受け入れられない人は、今の自分を受け入れられない人。

    つまり、大事なものを失った人ね。

    大事なものを失った‥‥?

    健康 容姿 お金 仕事 成績 恋人

    何か大事なものを失って、その現状を認められない‥‥

    なるほど、それが現実を受け入れられない人なんだな。

    簡単に言えば、失ったものを諦められない人ね。

    大事なものを失ったのなら、失った『今』を受け入れるのは難しいな。

    大事であればあるほどな‥‥

    そうね。でも失ったのが現実なんだから、受け入れるしか道は無いわ。

    どうしても受け入れられない人の、心理的な原因と対策を解説するわね。

    おう。ささっと教えて欲しいぜ。

    前回はテストの点数で例えたわ。

    80点から50点に下がった自分を受け入れる話ね。

    今日もその流れで行くわよ。

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    失ったものをあきらめる

    結論から先に言っちゃうとね、どうにかして「あきらめる」しかないの。

    『80点の自分』をあきらめてしまわないと、『50点に下がった自分』は受け入れられない。

    うーん。 それだとマイナスのイメージしか持てないんだがな‥‥

    「本当は80点なんだ!」って強がって頑張った方が良くないか?

    劣等感の話の時に、強がっちゃダメって言ったはずよ。

    強がってしまうと、成長を邪魔する『優越コンプレックス』の状態に陥ってしまうわ。

    80点を取り返すまで劣等感が続く。強がって他人に嘘をつく。

    他人との競争が続くから、他人を仲間だと思えない。

    ああ、そうだったな。自分と他人とを比べる競争の状態で生きていると、

    他人は競争相手、つまりになってしまうんだったな。

    そうよ。
    他人と比べてしまうから、情けない悔しいとか思って、50点に下がった自分を受け入れられない。

    まずは目の前の現実を、ありのまま受け止めないといけないんだったな。

    そうね。
    じゃないと努力が空回りしたり‥‥
    他人に嘘をつく事になったり‥‥

    80点に戻れない状態が続くと、そのうち心が折れてしまう。

    でも「あきらめる」って言葉が、なんかイヤじゃないか?

    「あきらめる」っていう言葉だけ聞くと、50点の自分で良いや、っていうイメージかもね。

    でも「自分を受け入れる」っていうのはそういう事じゃないのよ。

    50点を取った現実を直視して、そこから再出発しようって感じよ。

    ‥‥なるほどだぜ。
    いったんあきらめるって感じだな。

    良いこと言うわね。まさにそうよ。

    いったん80点の自分はあきらめて、視線を足元に落として、現在地である50点を確認するの。

    50点を現在地として、そこから再出発すれば強がる必要は無いはずよ。

    点数の高い人を敵だと思わない。
    素直に質問できるし弱音も吐ける。

    次が60点でも成長を感じられる。


    もし40点に下がったとしても、本当は80点なんだ!って強がってる時よりは受け入れやすいはずよ。

    なるほどな。「あきらめる」っていう意味はだいたいわかったぜ。

    ただあきらめるんじゃなくて、あくまで前向きに、いったん現在地を見つめ直すという感じだな。

    そういうことね。

    ‥‥ここであえて聞かせてもらうぞ。

    いったん、あきらめた方がいいと言われても、やっぱりあきらめられない人って居るんじゃないか?

    年収や失恋や病気とかの、もっと深刻な問題だったら、受け入れるのは難しくなるはずだぜ。

    年収が下がる 恋人にふられる
    後遺症の残る病気にかかる
    もっと言えば、大切な人と死別する


    そういった深刻な問題ね?

    うん。失うものが大きくなれば、その分、あきらめて受け入れるのが難しくなるはずだ。

    おっしゃる通りね。とても重要な話だから、今日はとことん掘り下げて考えていくわよ。

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    あきらめられない場合は?

    わかりやすい『年収』から話すわね。

    年収が下がった自分を受け入れられないのは、テストの点数が下がった場合と同じよ。

    自分と他人とを比べて競争して、勝ち負けを判断する『縦の関係』で生きているから受け入れられないの。

    負け組という言葉があるように、年収が少ない事を『負け』だと判断するから受け入れるのが難しくなる。

    たしかに。
    年収の話はわかりやすいな。

    大切な人と死に別れる、というのは、年収やテストの点数とはショックの度合いが違うわね。

    だけど現実を受け入れないと、嘘をついたり、過去に逃げたり、他人と敵対したりするのは同じね。

    大切な人が、まだ生きているフリをして、自分や他人に嘘をつく‥‥

    幸せな思い出にひたり続けて、過去に閉じこもる‥‥

    そういうのはなんとなく想像できるんだが、「他人と敵対する」ってのはどういう事だ?

    仮に最愛の夫を亡くしたとするわよ。

    その現実を受け入れない場合、幸せそうな夫婦を見た時に、自分の境遇と比べて悪い劣等感を抱く。

    『幸せ』という尺度で競争をする。
    そして、競争相手は敵になる。


    「私の方が良い妻なのに、なぜ私の方に不幸が訪れるのか?」

    「あんな何も考えてないバカな女が、わたしより幸せなのは許せない」

    そんな思い込みに逃げるかもね。

    現実を受け入れないと、そんな考えに陥るかもしれないんだな。

    もちろん、大きなショックを受けて、すぐにそれを受け入れろというのもきつい話よ。

    大切なものを失ったんだから、受け入れるには時間がかかって当然だわ。

    そうだよな‥‥
    でも受け入れないと、前向きに生きることは出来ないよな‥‥

    年収にしても死別にしても、失ったものにこだわり続けると、現実である
    『今の自分』を受け入れるのが難しくなるのよ。

    失ったものに注目するんじゃなくて、今の自分に『残ったもの』を大切にしないとね。

    なぜなら失ったものはすでに過去の話で、残ったものが現実だからね。

    悔しかったり悲しかったりするのは当然だけど、現実から逃げ続けちゃダメって事だな。

    そうね。
    最終的には、現実の世界に戻ってこないといけないとわかっているなら、

    ひとときの間、現実から逃げるのは仕方ないと思うわ。

    私は昔、飼ってた猫が死んだ時、まだどこかにいるんじゃないかと思って探し回った事があるぜ。

    私の友達も 昔ひどい失恋をして、彼氏とふたりでよく行ってた店に、ひとりで通い続けてたわね。

    そうやって現実である『今』を再確認してるのかもな。

    そして「やっぱりいない」と理解していって、次第に受け入れていく感じなんだろうな。

    どんなに受け入れ難い現実でも、受け入れることが、最終的には自分の幸せにつながる

    この考え方を忘れなければ、そのうち現実には戻って来れるはずよ。

    すぐに受け入れられる人と、なかなか受け入れられない人がいるのって不公平だよな。

    人によって受け入れ方に差が出るのは、何が違うからなんだ?

    その違いを理解するには、共同体感覚の話を進める必要があるわね。

    自信の有り無しで変わる

    ここからは、ありのままの自分や、現実を受け入れる行動を『自己受容』と呼ぶわよ。

    他人と競争して、その結果から自分の価値を判断してしまう『縦の関係』での生き方。

    それが自己受容の邪魔をするって話をずっとしてきたわよね?

    うん。そうだな。

    他人と競争するのは『勝ち負け』にこだわっちゃうからだ。

    勝ち負けにこだわったら、自分が負けてる時に受け入れ難いのも当然だ。

    そうね。他人と競争する生き方から、他人と対等に付き合う『横の関係』に切り替えないといけない。

    自己受容するには『横の関係』での生き方が必要になる。

    じゃあ、その横の関係に切り替えるには、どうしたらいいのか?

    その答えが『自己受容』なのよ。
    ややこしい話よね。

    なんだそりゃ。

    自己受容には横の関係が必要で、横の関係には自己受容が必要‥‥

    堂々巡りじゃないか。
    どっちを先にやればいいんだよ?

    弱い自分を受け入れないと、競争からは抜け出せない  [自己受容]

    競争から抜け出さないと、弱い自分は受け入れられない  [横の関係]

    堂々巡りでややこしいから、自己受容と横の関係は、一緒にやるものだと考えた方がいいわ。

    横の関係を進めるために、第9回で話した『共感』というテクニックを試すのも良いわね。

    自己受容するために、今の自分が本当の自分だと考えるくせをつけるのも良いと思う。

    ただし、自己受容するために、決定的に必要なものがあるわ。

    これが無かったら、自然に無理せず自己受容するのは難しいの。

    何が必要なんだ?

    ズバリ『自信』よ。

    あぁーなるほどな。それはなんとなくわかるんだぜ。

    自信のある人は、マイナスだと思うことでも前向きに受け入れそうだ。

    私は能力があって、役に立つ人間だ

    こういう実感が無い人は、困難に遭遇した時に、現実を前向きに受け入れるのは難しいのよ。

    前向きに一旦あきらめるんじゃなくて、後ろ向きに完全にあきらめてしまいがちなの。

    「どうせ私なんてこんなもんだ」って思ってしまいそうだよな。

    『自己受容』は、前向きな再出発の為のあきらめだけど、

    後ろ向きなあきらめは人生を放棄するようなものね。

    80点の自分をあきらめて、50点の自分を受け入れる‥‥

    そこから前を向いて歩き出すのか?
    あるいは立ち止まってしまうのか?


    どっちの道に進むかは、自信が有るか無いかで変わってきそうだ。

    以前も話したけど、アドラー心理学には人生の目標というものがあるわ。

    この目標を達成した人が、アドラー心理学が理想とする人間像よ。

    さっきから言ってる自信というのは、『自分には能力があるという実感』って部分だな?

    その通りね。この目標を達成するには、やはり『共同体感覚』を身に付ける必要があるわ。

    今話したように、自己受容がしやすい人は、自信を持っている人よ。

    そして自信を持つためには、共同体感覚を身に付ける必要があるの。

    またややこしくなってきたぜ‥‥

    話を整理するわよ。

    受容・信頼・貢献で構成される共同体感覚は、横の関係という土台の上に成り立っているのよ。

    ふむ。共同体感覚も横の関係も、全部つながってるから、一緒に頑張らないといけないんだな。

    この図で見ると『貢献』が自信につながって、それがまた『自己受容』につながってるな。

    そういえば共同体感覚の話の時に、他者貢献が自信を持つことにつながるって言ってた気がするぜ。

    よく覚えててくれたわ。

    他人に貢献できれば 自分の価値を実感できて、ありのままの自分を受け入れられる。

    「自分の価値を実感できる」ってのが自信につながるんだな。

    そう。
    他人に貢献すれば、自信が生まれる。

    じゃあ、とりあえず他人に貢献していれば、自己受容も出来るし、良い流れに乗れるんじゃないか?

    そうやって単純に考えるのもアリだと思うわ。

    でもね、他人の役に立とうっていう気持ちって、自然と湧き上がってくる状態じゃないと、絶対続かないのよ。

    自分を受け入れず、他人と競争して、他人を信頼していない状態での貢献は続かないの。

    そうか。やっぱり全部やらないとダメなんだな。

    でも「迷ったら他者貢献」ってのは良い考え方よ。

    私もそのように行動してるわ。

    今日のまとめ

    長くなってきたし、私なりに今日の話をまとめていいか?

    お願いするわ。

    自己受容ができない人は、失ったものをあきらめないといけない。

    失った『今』が現実なんだから、そこから目を背けてはいけない。

    どんなに受け入れ難い現実でも、受け入れる事が、最終的には自分の幸せにつながる。

    この考え方を理解して、忘れないようにしないといけない。

    その通りね。

    あきらめた後に、立ち止まってしまうのは『後ろ向きなあきらめ』

    自己受容はそうではなくて、あきらめた後に前に進む『前向きなあきらめ』

    あきらめた後に、立ち止まらず前に進むには『自信』が必要になる。

    自信を持つためには、共同体感覚を身に付ける必要がある。

    特にその中の『他者貢献』が必要。

    うん。

    自己受容・他者信頼・他者貢献、3つの要素で成り立つのが共同体感覚。

    この3つは完全にループしていて、それぞれが補い合っていて、一つも欠かすことが出来ない。

    このループは他人と対等な関係を築く『横の関係』が土台となっている。

    横の関係 自己受容
    他者信頼 他者貢献


    全てが繋がってるから全てが大事。

    迷ったら他者貢献っていう考え方もアリ。

    ありがとう魔理沙。ちょっと強引だけど今日はそこまでで十分よ。

    今日は専門用語がたくさん出てきて疲れたぜ。

    でしょうね。次回は『他者信頼』に進んでいくからね。

    自分を受け入れるってのは難しい行動だから、わからなくなったら復習しておいてね。

    次回に進みます

      嫌われる勇気の徹底解説

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