アドラー心理学⑱他人を信頼するために、すべての人を尊敬する

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    目次

    今日のテーマ

    今日は『他者信頼』の第2回だな。

    他人を無条件に信じるには
    相手への尊敬が欠かせない


    前回はここで終わってるから、その続きを聞かせてもらうぜ。

    そうね。前回の最後に、魔理沙が言った言葉から話を始めようと思うわ。

    「尊敬できる人とできない人がいる」

    残念ながら私はそう感じたんだぜ。

    魔理沙の疑問はこんな感じよね?

    「尊敬するかしないかなんて、自分で決められるものなのか?」

    「無条件に誰に対しても、尊敬なんてできるのか?」

    そうそう。無条件に、すべての人を尊敬するなんて難しいと思うぜ。

    世の中には色んな人がいるからね。
    魔理沙の考えはよくわかるわ。

    アドラーがそれをやれって言うのなら、どうしたら出来るようになるのか教えて欲しいぜ。

    ごもっともな意見だわ。

    なぜすべての人を尊敬できないのか?
    まずはこれを説明するわね。

    横の関係なら尊敬できる

    尊敬できる相手とできない相手に分かれるのは、魔理沙が他人を評価して、差別しているからなの。

    自分より の人は尊敬する
    自分より の人は尊敬できない

    みたいな感じでね。

    それって私が『縦の関係』で生きてるって事か?

    さすが、気づくのが早いわね。

    相手が自分より、上か下かを判断して、その評価によって態度を変える

    それが縦の関係での生き方だわ。

    この生き方では、自分より上だと思う人しか尊敬できないから、

    「すべての人を尊敬する」なんて絶対に無理なのよ。

    そういえば、共同体感覚の3つの要素は、縦じゃなくて横の関係が土台になってるんだったな。

    自己受容他者信頼他者貢献

    『共同体感覚』は、この3つの行動をリンクする事で身に付けられるわ。

    そして、この3つの行動は、他人と対等に付き合う『横の関係』を土台として成り立つのよ。

    他人を差別する『縦の関係』で生きてたら、共同体感覚は身に付けられないってことね。

    なるほど‥‥ 『みんな』を尊敬するんだから、上とか下とか、区別なんてしてる場合じゃないんだな。

    そうなのよ。以前に『共感』という、横の関係を築くテクニックを紹介したけど覚えてる?

    共感が全ての元になる

    『共感』か。覚えてるぜ。
    他人と横の関係を築く入り口だよな。

    他人と対等な関係を築くには、相手の立場で物事を考えないといけない。

    相手の主張がどんなものであっても、「自分が正しい」と思った瞬間に相手を見下してしまう。

    そして、自分の『正しさ』を押し付けたくなってしまう。

    そうね。その話をした時に、私はこう言ったはずよ。

    共感というのは相手を敬う行為だ

    つまり、共感は尊敬につながるの。

    なんか頭がこんがらがってきたぜ‥‥

    わかりやすく言い直すわね。

    尊敬も、横の関係も、他者信頼も、全て『共感』からスタートするのよ。

    共感ってすごいんだな‥‥

    共感が、横の関係にも尊敬にもつながって、横の関係が「すべてのひとを」って所につながってるな。

    そう。横の関係では『すべてのひと』と対等につきあうからね。

    なるほど‥‥ 私が出来ないって言ってた「すべての人を尊敬する」という行動は、共感から始まるんだな。

    そういう事ね。

    共同体感覚は横の関係を土台にしてるんだから、さらにその出発点となる共感は、すごく重要じゃないのか?

    おっしゃる通りよ。

    だから私は、課題の分離の次は、共感に進むように提案したのよ。

    私もその順番で行動したからね。

    「すべてのひとを」とか「無条件に」っていうのが、横の関係から生まれるのはわかったぜ。

    「尊敬する」という行動が、共感から始まるのもわかった。

    そろそろ尊敬という行動の中身を教えてくれてもいいんじゃないか?

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    尊敬とは何か?

    「尊敬する」という行動を、ひとことで表すとこうなるわ。

    相手がそのひとらしく、前向きに、
    成長していけるように気づかうこと

    そのひとらしく、前向きに‥‥?

    相手が「こうなりたい」と思う人になれるように、協力や援助をしていくって感じかしら。

    ふむ‥‥ 相手が、そのひとらしく生きていくために、助けたり、援助したりしていく‥‥

    確かに、これをやろうと思ったら、相手に『共感』する必要があるな。

    相手を知らないと出来そうもないぜ。

    そうね。「そのひとらしく」という部分が一番大事だわ。

    相手が望む生き方が出来るように協力していくんだから、

    まず相手が何を望んでいるのかを知らなかったら、出来るはずがないの。

    共感の話にも出てきたけど、
    「相手を知らないと、共感できない」

    そうだな。自分に置き換えて想像するとよくわかるぜ。

    相手が私の意見を無視して、あれしろ、これしろ言ってきたらやる気も出ないんだぜ。

    私の望みを理解してくれて、その上でどうしたらいいのかを提案されたら、前向きに受け入れられそうだ。

    conversation

    『わたし』を尊敬してくれる人の言うことは、聞く価値があると感じる。

    なぜならそれは、相手の意見の押し付けじゃなくて、

    「わたしが」「わたしらしく」成長するためのアドバイスだからね。

    これは『課題の分離』をする時の考え方にもつながるな。

    相手の課題に踏み込まずに、協力や援助をしていく‥‥

    その通りね。勉強での課題の分離とか色々話したわよね。

    勉強しないことで訪れる結末を、最終的に引き受けるのは子ども自身。

    だから勉強は子どもの課題。

    勉強しない理由を知ろうともせずに、「勉強しろ!」と強制するのは、子どもの課題への介入になっちゃうぜ。

    子どもが反発するのも当然だ。子どもの意見が尊重されてないんだから。

    『尊敬』のかけらも無い命令なんて、子供も聞きたくないよな。

    勉強「する・しない」は子どもの課題なんだから、親が口出しするべき事じゃないわ。

    でも、もし子どもが「パイロットになりたい」みたいな夢を持っていたとしたら、親の出番ね。

    パイロットになる為に必要な、知っておくべき事を教えてあげないとね。

    例えばどんな事だ?

    例えば、多くの人命を預かるパイロットという職業は、簡単にはなれないこと、とかね。

    倍率も高いから、勉強するのは当然として、それ以外にもたくさんの努力や犠牲が必要になること。

    どんな学校に入って、どんな勉強をして、どんな企業に就職する必要があるのか‥‥

    親も頑張って調べて、色んな知識を与えて、夢を追いかける為の援助や協力をするべきね。

    強制ではなくてね。

    なるほど。それが子どもを尊敬するという事なんだな。

    知識を与えた後、どうするのかは子どもが決めるんだよな。

    そう。子供の「そのひとらしさ」を邪魔してはいけないのよ。

    知識を得た結果、パイロットになるのをあきらめるのも、勉強するのも子どもの自由よ。

    「パイロットになりたいなら勉強しなさい!」なんて叱るのは論外ね。

    尊敬が必要なのはわかってきたぜ。

    でも、子どもが勉強しなかったら、親としての責任を放棄してる事になっちゃわないか?

    それが多数派の意見でしょうね。

    でも それでは、子どもの自立を邪魔してしまう。

    『介入』は、相手の課題を奪って、自立を邪魔する行為だからね。

    親の責任は、子どもが「そのひとらしく」生きていく為に協力して、自立してもらう事なのよ。

    極端な話、子どもがなりたいと思うものになる為に、勉強が必要ないならしなくていいの。

    仕事を怠ける人に対しても同じだな。

    仕事にどう向き合うかはその人の課題なんだから、頑張るか怠けるかはその人の自由だぜ。

    仕事の場合は会社のルールがあるから、完全に自由ではないけどね。

    会社が決めたルールを守るレベルで怠けてるなら、それをどうこう言うのは介入になるわ。

    そのひとらしさが無視されてしまう。

    難しいな‥‥
    そういう人も尊敬できないとな‥‥

    なぜ怠けるのかを、知ることから始めないといけないな‥‥

    魔理沙は相手が怠けていると思う。
    相手は魔理沙が頑張り過ぎだと思う。

    どちらが正しいかは、魔理沙が決められることじゃない。

    どんなに相手が間違ってると感じても「自分が正しい」と思った瞬間に、相手の課題への介入が始まる。

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    絶対的な正しさなんて無い

    正しいとか間違ってるっていうのは、ひとそれぞれって事なのかな?

    そうよ。人はみんな、自分が正しいと思って生きてるの。

    勉強しないのも仕事を怠けるのも、本人にとってそれが「正しい」ことだからだわ。

    正しさって、なんか宗教みたいだぜ。

    『本当の正しさ』なんて、この世のどこにも無いんだな‥‥

    神様みたいなものなんだな。

    おもしろいこと言うわね。たしかに『正しさ』は神様みたいなものだわ。

    自分の正義に酔いしれて、他人を非難する人は『正しさ教』の狂信者ね。

    『正しいと思うこと』それ自体が間違っているとしたら、結局どうしたらいいか分からなくなってきたぜ‥‥

    「何が正しくて、何が間違いなのかわからない‥‥」

    「どうしたらいいかわからない‥‥」

    このような感覚はとても大事よ。

    『正しさ』なんて、自分勝手な思い込みだと解らないと、そういう感覚は得られないわ。

    でも、どうしたらいいかわからない状況では困るだろうから、次回の話にもつながる結論を言うわよ。

    アドラー流の『本当の正しさ』というのは存在するの。

    adler

    やっときたか。
    わかりやすくどうぞ。

    『本当の正しさ』というのは、魔理沙が決めることじゃない。

    相手が決めることでもない。

    お互いの正しさを認め合い
    お互いが幸せになれる道を探す態度

    これがアドラー流の本当の正しさよ。

    ‥‥‥どっちが正しいか、なんて関係ないんだな。

    お互いが相手の正しさを尊重して、お互いが幸せになれる道を、一緒に探っていくのか‥‥

    正しさなんて、ひとそれぞれよ。

    だから、相手の正しさを聞き、自分の正しさを主張して、お互いの正しさの融合を目指す態度が必要になるの。

    『本当の正しさ』っていうのは、相手との関係によって変わるんだな。

    自分でも、相手でもなくて、二人で決めることなんだな。

    その通りよ、魔理沙。

    『自分だけの正しさ』を捨てれば、相手の正しさに共感する事ができる。

    相手の立場で考える共感ができれば、相手の『そのひとらしさ』を気づかう尊敬に進めるわ。

    なるほどな。『相手の正しさ』に注目する為に、まずは『自分の正しさ』から目を離すんだな。

    そして、相手の立場になったつもりで考えて、想像して『相手の正しさ』を知ろうとする。

    これが共感だ。

    その『相手の正しさ』を大事に考え、尊重しつつ相手の成長を気づかう。

    これが尊敬だな。

    すべての人を尊敬するなんて難しそうだけど、みんなと仲間になる為には、必要な気がしてきたぜ。

    自分が正しいと思うことに捕らわれず に、少しずつ目の前の人に共感する事から始めるといいわよ。

    共感は『尊敬』と、更に『横の関係』にもつながる大事な行動だからね。

    そういえば今日のテーマは他者信頼だったな。

    尊敬の話が長くなってるが、他人を信じる話に戻さなくていいのか?

    たしかにそうね。「信じる」っていう行動がどんなものなのか、具体的に説明したかったんだけど‥‥

    長くなるから「他者信頼のまとめ」と合わせて次回に話そうかしら。

    そうだな‥‥
    今日の話は理屈っぽくて疲れたぜ。

    よし、今日の話をまとめるわよ。

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    今日のまとめ

    魔理沙がすべての人を尊敬できない理由はわかった?

    それは、私が『縦の関係』で生きているからだぜ。

    相手が自分より上とか下とか差別するから、尊敬できる人とできない人が出てきてしまう。

    自分より上だと思ったら尊敬するし、下だと思ったら尊敬できない。

    『横の関係』という、他人と対等な関係なら、差別せずに全てのひとが尊敬の対象になるはずだ。

    その通りね。
    『尊敬』の意味はわかった?

    相手がそのひとらしく前向きに、
    成長していけるように気づかうこと


    これだぜ。

    『そのひとらしさ』というのは、どんなものだったかしら?

    ひとはみんな「自分が正しい」と思って生きているんだよな。

    つまり、ひとそれぞれ「正しい」と思うことは違っている。

    そのひとが持っている
    そのひとだけの正しさ


    これが『そのひとらしさ』なんだぜ。

    そうなると、尊敬する為に必要なものがわかってくるわね。

    そうだな。
    まずは『相手の持っている正しさ』を知ることから始めないとな。

    相手の立場で考えて、相手の正しさを理解しようとする『共感』

    これが他人を尊敬する為には必要になってくるわね。

    相手に共感しようと思ったら、自分だけの正しさは捨てないといけない。

    そうしないと、自分が正しいと思う事にこだわってしまって、相手の正しさになんて目が向くはずがないぜ。

    おっしゃる通りだわ。

    自分の正しさと相手の正しさを切り離して考えるには、やはり『課題の分離』が必要なんだと思ったぜ。

    私もそう思うわ。この世に絶対的な正しさなんて無いの。

    相手の人生は相手の課題なんだから、相手の正しさは自分の正しさとは切り離して考えるべきね。

    そうなると、すべての人を尊敬する道順はこうなるな。

    まずは課題の分離をして、自分の正しさと相手の正しさを切り離す。

    切り離したままでは仲間になれないから、相手の正しさを邪魔しないように近づかないといけない。

    その時に使うのが『共感』だ。

    相手の立場になったつもりで考えて想像して、相手の『正しさ・らしさ』を理解しようとする。

    共感ができて、相手らしさが理解できたら、それを大切に考える『尊敬』に進める。

    自分の正しさから目を離せば、自分と他人のどっちが正しいか?なんて競争はしなくて済む。

    つまり、相手が赤ちゃんだろうが大統領だろうが、誰の『正しさ』でも平等に接することが出来る。

    その平等さこそが『横の関係』で、それは『すべてのひと』に対して出来ることだな。

    『共感』から全部つながったわね。

    課題の分離をして、共感できれば、横の関係が築けて、すべてのひとを尊敬できる。

    うまくまとめてくれたわね。
    私より上手だと思うわ。

    でも、このまとめ方だと、自分らしさとか自分の正しさの出番が無いな。

    相手のことばっかり考えてるぜ‥‥

    最後のキーワード『信じる』についての解説を次回にまわしたから、今日のまとめはそれで充分よ。

    自分と相手の正しさをミックスする『本当の正しさ』は次回に話すわ。

    他人との接し方って奥が深いんだぜ。
    なかなか終わりが見えてこないぞ。

    ラストは近いわ。
    だから、もう少し頑張りましょう。

    次回に進みます

    嫌われる勇気の徹底解説

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