今日のテーマ
今日のテーマは アンパンマンよ。
お堅い話が続いてるから、今日は軽めの話題にするわ。
アンパンマン?
アドラー心理学と関係あるのか?
わかりやすい例として、みんなが知っていそうなキャラクターに登場してもらうのよ。
もし、アドラーがアンパンマンに出会ったら、どんなアドバイスをするのか想像してみましょう。
日本の正義のヒーローが、アドラーと仲良くできるのか‥‥
そう。アドラー心理学の最終目標、『共同体感覚』を理解する足がかりになると思うわ。
アンパンマンが海外で受け入れられない理由の、「自己犠牲の弱点」についても解説するわよ。
それはなかなか興味深いな。
まずは『共同体感覚』の話を思い出さないとな。
自分を受け入れているか?
・ありのままの自分を受け入れる
・無条件に他人を信頼する
・見返りを求めず他人に貢献する
この3点から、アンパンマンの行動を考えてみましょうか。
共同体感覚は、この3つの行動をリンクさせて身に付けるんだったな。
そうね。自分の『居場所』を見つけて、幸せに生きるための行動よ。
まず最初はこれだな。
『ありのままの自分を受け入れる』
アンパンマンは出来てると思うぜ。
そうね。
自分を大きく見せて威張ったり、逆に自分を小さく見せて、逃げるようなアンパンマンは見たことがないわ。
自分の弱点を素直に受け入れて、前向きに努力してると思うぜ。
よし。じゃあ『自分を受け入れる』はクリアしていると考えましょう。
他人を信頼しているか?
次はこれだな。
『無条件に他人を信頼できる』
アンパンマンは、全ての人間が好きらしいから出来てるように思えるけど、ひとつ気になるわね。
ん? 何が気になるんだ?
アンパンマンは、最終的には『暴力』で解決するって点よ。
ああ、アンパンチだな。
そうアンパンチ。
まぁさすがに、バイキンマンと出会って、いきなりアンパンチは繰り出さないわよね。
必ず「やめるんだ!」と対話を持ちかけているわ。
そうだな。有無を言わさず殴りかかるイメージはないぜ。
でも、バイキンマンが言うことを聞かなかったら、暴力で解決する道を選んでしまう。
正義のヒーローなんだから、悪を懲らしめるのは普通なんだぜ。
それは微妙ね。
アンパンマンには力があるから、それで解決できるけど、もしバイキンマンより弱かったらどうなるかしら?
・・・うーん・・・ 泣き寝入りするしかないかな。
そうよね。
アンパンマンの正義は、相手を打ち負かす力があってこそ、なのよ。
『弱者は自分の意見を主張できない』という事になってしまうわね。
・・・
バイキンマンの言い分も聞いて、お互いが納得できる、妥協点を探さないといけないのよ。
バイキンマンを『無条件に信頼』していたら、わかってもらえるように、暴力に頼らず話し合いを続けるはずよ。
そんな話し合いで解決するようなヒーローの話、子供は見てくれないぜ。
ふふ。交渉人とかお坊さんみたいな大人向けのヒーローは、すぐチャンネルを変えられちゃうわね。
自己犠牲は続かない
最後はこれだな。
『見返りを求めず、他人に貢献する』
これはアンパンマンの一番の美点だ。
「食べ物をあげるから、代わりに~~をくれ」なんて見返りを求めるアンパンマンは想像つかないぜ。
そうね。アンパンマンは『自己犠牲』のキャラクターとして有名だわ。
食べ物である自分の顔を分け与えて、お腹の空いた他人を助ける‥‥
そうそう。自分を犠牲にしてまで他人に貢献する、代表的な存在だぜ。
でもね、これも問題がひとつあるの。
他人に貢献する『他者貢献』は、自分を犠牲にしてはいけないのよ。
はあ? 何を言ってるんだ。
自分を犠牲にしないと、他人に『貢献』なんて出来ないじゃないか。
アンパンマンだって、自分の顔を犠牲にして他人の空腹を満たすんだぜ。
まぁ、普通はそう思うでしょうね。
他人を助けようと思ったら、自分の時間や労力が犠牲になる。
そうだぜ。何かしらのコストを支払わないと、他人を助けるなんて出来っこないんだぜ。
ふふ。おっしゃる通りね。
自分の何かを犠牲にしないと、他人を助けられない。
これは真理だと思うわ。
そうだぜ。
でもね‥‥ アンパンマンは、顔が無くなるほど自分の顔を分け与えると、動けなくなってしまうわ。
動けなくなったら、ジャムおじさんが顔を取り換えてくれるぜ。
それはジャムおじさんがサポートしてくれるから出来ることだわ。
もしジャムおじさんがいなかったら、アンパンマンの他者貢献には限界があるのよ。
‥‥つまりどういうことだ?
『自己犠牲は続かない』
そういうことよ。
例えば、100万円持っている人がいて、「お金に困る人を助けたい」と思ったとするわ。
10万円ずつ分け与えていったら、9人目を助けたところで、自分と相手が同じ状況になってしまう。
貯金は残り少なくなって、自分のことを考えたら、これ以上は他人を助けられない。
9人も助けられたら立派なんだぜ。
でも、助けるうちに自分のお金はどんどん減ってしまった。
お金を使って出来ることが、どんどん出来なくなる。
それに、もし10人目に、最高に困り果てている人が現れても、これ以上はどうすることも出来ない。
‥‥まぁそうだな。
自己犠牲の弱点は次のふたつよ。
・続かない
・自分の幸せが後回しになる
アドラー心理学では自己犠牲を否定するわ。
自分も、他人も、いっしょに幸せにならないと意味がないと考えるのよ。
でも、他人に貢献するには自己犠牲は必要なんだぜ。
そうね。だから、お金で他人を助けたいなら、まずは自分がお金持ちにならないといけないわね。
じゃないと続かないわ。
‥‥なるほど。余った分を足りない人にあげるのか。
他人を幸せにしたかったら、まずは自分が幸せにならないといけないってことだな。
お金があれば幸せかどうかは別問題だけど、考え方はその通りね。
だから、アドラーがアンパンマンに出会ったら、こうアドバイスするんじゃないかしら?
「ジャムおじさんから、自分の顔の作り方を学んだらどうだろう?」
なるほどな。アンパンマンが、自分の顔をたくさん作っているところを想像すると面白いぜ。
でもたしかに、自分で作れたら、ジャムおじさんが風邪で寝込んでいても困ってる人を助けられるな。
アンパンマンの『他者貢献』は、ジャムおじさんがいないと成立しないから不十分だってことね。
今日のまとめ
結局アンパンマンは、信頼と貢献が、アドラーの考えでは不十分なんだな。
そういうことね。子供向けのアニメだから仕方ないけどね。
アドラー心理学的なアンパンマンだったら、まずは早起きをしないとな。
そして自分の顔をたくさん作って、それを持って、お腹が空いて困っている人を探しに行く。
人を困らせる悪人がいたら、話し合って、お互いが納得できる妥協点を探っていく。
‥‥たしかに、そんなアニメだったら子供の頃の私は見ないだろうな。
そもそも、話し合って、バイキンマンが心を入れ替えてしまったら、話が終わってしまうわ。
まぁそうだな。
ただの教育番組になってしまうな。
アンパンマンの作者「やなせたかし」は、従軍経験があったらしいわ。
つまり、戦争を体験した人だったの。
とても貧しくて、いつも食べる物に困っていた。
「誰か、食べ物を持ってきてくれないかな‥‥」と、いつも願っていた。
なるほど。そんな願いを叶えてくれるのが『アンパンマン』なんだな。
そう。
作者の願望を具現化した存在ね。
ジャムおじさんが健在な限り、今日もアンパンマンは、かつての作者のように困っている人を助けていくはずよ。
多少、考え方の違いはあっても、他者貢献を第一に考えるアンパンマンは、アドラーと仲良くできると思うわ。
次回に進みます