アドラー心理学の目指す道
第二夜・理想の人物像
さぁ、今日は第二夜のラストよ。
アドラー心理学が目標とする、理想の人物像がどんなものか解説するわ。
理想の人物像か‥‥
幸せな人生を送れる人の、イメージみたいなものか?
まぁそんな感じね。生き方の道しるべになるような話をしていくわ。
これまでに、いろんな厳しい話をしてきたわよね?
性格を言い訳にして逃げるな とか。
トラウマとちゃんと向き合え とか。
そんな話をするたびに、魔理沙は疑問を感じてたはずよ。
そうだったな。
できない人はどうしたらいいんだよ?
って思ってたぜ。
今日はそんな疑問に答える回よ。
今まで語られてこなかった、アドラー心理学での進むべき道を紹介していくからね。
ふむ。幸せに生きる道なら是非とも知りたいぜ。わかりやすく頼むぜ。
アドラー心理学の目標
まずは結論から話してしまうわね。
行動面の目標は、
自立すること
社会と調和して暮らせること
心理面の目標は、
わたしには能力がある
人々はわたしの仲間である
こういう意識を持つこと。
行動面の目標を達成するには、心理面も整ってないといけないわ。
ふむ‥‥ なるほど‥‥
自立していて、
社会と調和して暮らせている。
そんな生き方をするには、
自分には能力があるという実感と、
みんな仲間であるという意識が必要。
そうそう、そんな感じ。
覚えやすいようにキーワードだけ抜き取るとこうなるわ。
自立・調和・自信・仲間
「わたしには能力がある」ってのは、
「自信」と思えばいいんだな。
自信もしくは勇気だけど、イメージしやすいのは「自信」だと思うわ。
自立・調和・自信・仲間か‥‥
「自立」っていうのは、具体的にどういう状態なんだ?
物質的にも精神的にも、過度に他人に頼らなくても大丈夫な状態ね。
どんな場所でも、ひもじい思いをせずに、自分らしく生きていく力。
本の内容が進めば、もっと具体的にわかると思うわ。
そのうちわかるってことだな。
その次の「調和」ってのは、社会に馴染んでるって感じなのかな?
そうね。調和は、
四つ目の「仲間」と関係しているわ。
他人のことを「仲間」だと感じているから、敵対したりせずにうまく馴染めるって感じね。
仲間という意識から、調和が生まれるってわけだな。
抽象的だけどそんなイメージよ。
みんな仲間だと感じられたら、安心できるし調和も生まれやすい。
ふむ。
全部まとめるとこんな人物像かな?
自分の能力に自信を持っていて、対人関係に安心していて、自分らしく、社会に馴染んで生きている。
うん、そのまとめ方でいいと思うわ。
そして、そんな人物になる為に、乗り越えるべき3つの課題があるのよ。
逃げちゃいけない人生の課題
3つの課題か。
理想の人物像へと向かう道筋だな?
そうそう。乗り越えることで理想に近づける課題よ。
本の中ではタスクって呼ばれてわ。
課題よりタスクの方がかっこいいな。
じゃあそっちで統一しましょう。
幸せに生きるためには、どうしても避けて通れない3つのタスクがこれよ。
・仕事のタスク
・交友のタスク
・愛のタスク
‥‥仕事・交友・愛のタスクか‥‥
仕事を頑張って、 友達を大事にして、恋愛もこなせばいいってわけか?
ふふ、そんな単純な話じゃないけど、理解の入り口としては合ってるわ。
アドラー心理学は対人関係を第一に考えるから、この3つのタスクも全部、他人との関わり方だと思っていいわ。
んん?? 他人との関わり方?
それぞれのタスクは、それぞれの状況にふさわしい、対人関係を築くことで乗り越えるってわけよ。
‥‥??
例えば仕事のタスクだったら、仕事を頑張って成果を残すことではない?
そうそう。
仕事を頑張るって話じゃないの。
仕事場にいるたくさんの他人のなかで、関係を作って、うまくやっていくのが仕事のタスクね。
この段階でつまづくと、ニートや引きこもりになりがちなのよ。
そうなのか?
周りについていけないから引きこもるんじゃないのか?
ちがうわね。
仕事についていけないからじゃない。
仕事についていけないことについて、周りの人からどう思われるか?
これを気にするから引きこもるのよ。
‥‥なるほど‥‥
そうかも知れないな‥‥
仕事についていけなくても、地道な成長をアピールできたり、みんなと仲良くできてたら逃げずに済むか‥‥
うん、対人関係の築き方が問題なの。
これは交友も愛も同じよ。
3つのタスクの違い
3つとも「対人関係」を乗り越えるタスクなんだな。
単純に仕事を頑張ったり、友達や恋人を作ればいいってわけじゃない。
その通りね。
それぞれの状況で、ふさわしい関係を築けないと幸せにはなれないの。
3つのタスクの違いは、
「対人関係の距離と深さ」ね。
仕事が一番、遠くて浅い関係。
愛が一番、近くて深い関係。
ふむ、それはわかるな。
仕事上の人間関係は、薄っぺらくても成立するんだぜ。
「交友」や「愛」よりは、ハードルは低いと思わない?
そうだな。
仕事は強制的な結びつきがあるしな。
同じような目的に向かって、イヤでも協力しないといけない。
給料の為に割り切って付き合えるぜ。
交友や愛はそんな関係じゃないわね。
親友を持ったり、恋愛相手や子供と、良い関係を築いて維持するのは簡単なことじゃないわ。
んん??
愛のタスクは子供も対象になるのか?
そうね。愛のタスクは二段階あるわ。
第一段階は恋愛相手との関係で、第二段階は家族、 とくにその中でも親子の関係ね。
そうなんだな。
交友のタスクは、親友を作るようなイメージで合ってるか?
「親友」と呼べるような関係を、他人との間に築くのが交友のタスクね。
友達はたくさんいるけど、親友かって聞かれると微妙だな。
‥‥親友ってどんな関係なんだろう。
お互いの価値観を、尊重し合える関係でしょうね。
人生において、何を大切に思うかってのはは人それぞれよ。
意見が衝突して、議論したとしても、最終的には相手の価値観を尊重できる関係。
それは親友っぽいな。言いたいことは言うけど、最後は仲直りってわけだ。
そうね、そんな関係を築くのが交友のタスクだわ。
愛はもっと難しいんだよな。
第一段階は恋愛の関係、
第二段階は家族、特に親子関係‥‥
愛のタスクはとても難しいわ。
特に親子関係ね。
逃げることが出来ないから難しい。
恋愛相手は別れられるけど、親子関係からは逃げられない。
逃げるってのは育児放棄か?
まぁそんな感じね。
もっと悪いのもあるけどね。
第一段階の恋愛にしても、アドラー心理学は「束縛」を認めてないからね。
魔理沙は信じられないでしょう?
はぁ? 束縛を認めない?
それって浮気を容認してるって事か?
まぁそうなるわね。もちろん浮気を推奨してるわけじゃないわよ。
「するなら仕方ない」って考え方よ。
そんな考え方、誰も納得しないぜ。
束縛とは、相手の行動を支配しようとすることで、自由を奪う行為ね。
これはわかるかしら?
おう。
自由に浮気されたらイヤだからな。
そんな自由は制限されて当然だ。
もちろん「浮気されるのがイヤだ」って意思表示するのは構わないわよ。
でも「浮気禁止!」って言って、行動を監視したりしちゃいけない。
自由を奪ってはいけない。
どうしてダメなんだ?
なぜなら、人が愛を実感できるのは、
「この人と一緒にいると、とても自由に振る舞える」と思えた時だからよ。
不自由や強制、緊張、息苦しい‥‥
そういった関係からは、愛を感じることはできないの。
‥‥‥
‥‥浮気されるなら、浮気されることまでも含めて、その人を受け入れないといけないって事か?
さすが魔理沙、その通りよ。
それが愛のタスク。
愛は自由を奪わないの。
胃に穴が開くくらい、浮気で悩んだらどうするんだ?
そんな時は別れましょう。
第一段階ならそれができるからね。
魔理沙がイヤがることを、わかってて続けるような人なんだったら、一緒にいてはいけないわ。
今日のまとめ
今日は、アドラー心理学の理想の人物像を解説したけど、理解できた?
‥‥浮気の話は納得してないがな。
自由の話は第三夜で詳しくやるから、今のところはこれだけ覚えておいて。
「不自由を強いるのは愛じゃない」
ふむ、とりあえず了解だぜ。
今日、最初に話したのは、アドラー心理学が目標とするような、理想の人物像だったよな。
行動面の目標は、
自立すること
社会と調和して暮らせること
心理面の目標は、
わたしには能力がある
人々はわたしの仲間である
こういう意識を持つこと。
簡単にまとめた人物像はこれだ。
自分の能力に自信を持っていて、対人関係に安心していて、自分らしく、社会に馴染んで生きている。
そうね。そんな人になれたら幸せに生きられるってわけよ。
そして、そんな人になる為に、乗り越えるべき課題があったんだぜ。
3つある人生のタスクね。
・仕事のタスク
・交友のタスク
・愛のタスク
仕事・交友・愛。
それぞれの状況で、他人との間に良い関係を築いていくんだな。
その通り。
3つとも対人関係のタスクよ。
距離と深さに違いがあって、愛が一番、近くて深い関係。
つまり愛が一番難しい。
仕事は、強制的に一緒になるし、表面的な関係でも成立するから一番簡単。
交友は、親友と呼べるような関係を築くタスクだから、ちょっと難しい。
愛は二段階あって、一段回目は恋愛関係で、二段階目は家族・親子関係。
これはめちゃくちゃ難しい
恋愛関係は相手の自由を奪ってはいけないし、親子関係はツラくても逃れることが出来ない。
そうね。これらのタスクから逃げてしまうと、前向きで幸せな人生からも遠のいてしまうわ。
アドラー心理学の、理想の人物像から遠のいてしまうんだな。
でも逆に言えば、人生のタスクを乗り越えれば幸せに生きられるわ。
魔理沙の疑問も解消するわよ。
トラウマに悩まされることもなくなるし、性格のせいにして逃げなくてもよくなる。
‥‥‥たしかに、人生のタスクを乗り越えて、理想の人物像になれたら、トラウマとか性格に振り回されたりはしないだろう。
自信も持ってるし、他人とも良い関係を築けてるんだからな。
しかし新たな疑問も生まれたぜ。
人生のタスクにも、立ち向かえない人は、どうしたらいいのか?
仕事、交友、愛。このどこかで対人関係につまずいてしまって、先に進めなくなってる人は大勢いるはずだ。
ふふ、そう来ると思ってたわ。
その新たな疑問への答えは、第三夜・第四夜ね。自由と勇気の話よ。
やっぱり結局は勇気の話じゃないか。
いつまで待たせるんだよ。
もうちょっと待ってね。
第三夜で自由の話をして、やっと第四夜で勇気を語れる段階に入るから。
次回からは第三夜に入っていくわ。
本のタイトルにもなってる話と、超重要な対人関係の技術を紹介するわね。
今日した話も、アドラー心理学の根幹となる内容だから、ここから先に何回も出てくるし覚えておいてね。
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